ススキノと共に歩んで来た人生
「すきタン」の遺伝子で街を盛り上げていきたい

「釈迦万陀羅」「文明開館」「青春の舘」名物店と共に過ごした青年期

ススキノとの関わりは早かったですね。当時の時代感もあるし、もう流石に時効だと思うから言っちゃうと最初は高校生の時。当時はディスコブームで「釈迦万陀羅」にナンパ目的で行ってました。大学生になってからはバイトで当時の3大DJパブの一つ「文明開館」でアルバイト。ショータイムあり、ディスコタイムありの相席大函店で活気があって楽しかったですね。そこで度胸と酒の強さを身につけた代わりに大学は中退。その後、旅行会社に就職してツアーコンダクターとしてススキノの名物店「薄野霊園」をよくアテンドしていました。そして1988年にススキノでガイドセンターと「すすきのタウン情報」の出版をしていたあるた出版に入社しました。

世の中はバブル景気でしたが、当時の「すきタン」はバブルに乗れておらずなんだか適当な雰囲気でした（笑）。入社初日、10時始業だっていうから9時半頃に出社したら誰もおらず12時頃になってやっと経理の人が出社、午後から小汚い適当なカッコをした人たちがポロポロと出社してくるという（笑）。最初はとんでもないところに入ってしまったかなと思いましたよ。でも、そこからみんな街に魅せられるにつれ、どんどん熱気を帯びていき90年代半ばには、バブルと言っていいくらいには儲かってました。会社も自由にやらせてくれたし、ルールがなかったからこそ、1からルールを作り会社を成長させていく実感が持て、やり甲斐もありましたね。連日、夜中まで取材だ営業だと駆けずり回り、それからお客さんと梯子酒といった毎日で帰るのはいつも朝方でしたが楽しかったです。この頃、ススキノに深く関わりながらも、外からの目線を持てたのは店をやる上でよかったですし、そこで出来た人脈があったからこそ、多くの人たちに支えてもらえて今があると思っています。

色々と思うところもあり2002年に退職。他の出版社に勤めてみたりフリーの編集者をしてたりしたものの、「すきタン」廃刊の知らせを聞き、ススキノの多面的な魅力を伝える媒体を残さねばと半ば使命感から「すすきの DNA」という雑誌を2008年に創刊しました。ただ、出資してくれることになっていたオーナーが逃げてしまい、スタッフの給与を僕が払う羽目になり、お金も尽きて2号で廃刊しました。その頃、知り合いが現在、「DNAすすきの」が入っている部屋に入るテナントを探していて、店子を紹介してくれたら手数料あげると言われて目先のお金が必要だったこともあり探していたんですが、紹介したところの話がまとまらなくて成り行き上、自分がやることになったのが、今に到るきっかけですね。。初めはお金もなかったので、家賃も仕入れも全て後払いにしてもらい、とにかく知り合いに声をかけて来てもらうことでなんとかなったという感じで、まさに自転車操業でした。元「すきタン」という肩書きが信用となりなんとかなったという感じですね。昔からのうちの売りの一つに食パン食べ放題っていうのがあるのですが、これはそのお金がなかった時代に、知り合いがパン工場から商品にならないパンを持って来てくれて50円で売ってくれていて、それでなんとか食いつないでいたので、パンへの感謝の気持ちでやっています（笑）。

なんとか半年過ぎたあたりから知り合いが知り合いを呼び、どんどんその輪が広がっていくようになり、軌道にのることができ、昨年には15周年を迎えることができました。途中、「DNAすすきの」の向かいにスナックを、手稲にガールズバーを縁あってやることになりましたが、本当はあまり手広くやろうという気はないんです。一人でここのカウンターに入っているのが、一番、しっくりくる気がしますね。長く続けるコツは時間を守ること、支払いをきちんとすることですね。当たり前のようですが、これがきちんとできない店は経験上ダメになりますね。初めてススキノにきた頃からすっかり様変わりしてしまいましたが、街の魅力はまだまだ衰えていないと信じています。昨年は応援したい気持ちからススキノの情報、魅力を発信するラジオ番組をやりました。一緒に様々な時代を頑張って来た仲間も大勢いるので、この先も盛り上げていく一助を担えればと思っています。