働きながら学んだ人生観
接客もボランティアも誰かを笑顔にできることは楽しい

私、小学1年生から親に育てられていないんですよ。当時、27歳とまだ若かった母が癌を患い、ずっと闘病生活になってしまったことから、親戚や祖父母の家で育ったんです。だから、いつも自分の家じゃないって感覚があって早く自立したいって思ってました。子供ながらに、世話になっているっていうのが嫌だったんですよね。だから小学生の頃から新聞配達をしていたんですけど、小学生にとって新聞配達で得られるお金って大金じゃないですか。普通にお小遣いでやりくりしている同級生の中で自由になるお金が圧倒的に違うんですよね。可愛い消しゴムとか買い放題（笑）。だから、早く働いてお金を稼ぎたいと思って、中学校を卒業してすぐに働き出しました。楽しそうにしている同世代の高校生とかを見ると、やっぱり高校行けばよかったなぁとか、もっと勉強したかったなぁと思いことありましたけど、その分、学べたことも沢山あって今の私があると思うので後悔はしていません。ガソリンスタンドや、ファストフード、レストランなど接客の仕事ばかり選んでいましたね。人と接するのが好きでしたし、学校に行っていない分、接客で人と関わることが色々なことを学ぶ術だったんですよね。

接客が好きだったこともあって18歳になると昼の仕事に加えて、夜はススキノで働き始めました。19歳でシングルマザーとなり、妹と子供との3人暮らしをしながら、最初はAPRグループの「ラバーズ」、次にアイダ観光の「パフューム」、そしてトンフーの「セラヴィ」とニュークラで頑張っていました。当時のススキノを知る人ならお馴染みのお店ばかりですよね。人気店だけに各店から多くのことを吸収させてもらいました。ホステスとしての私を育ててもらったと思い感謝しています。お仕事は楽しかったですよ。いろんなお仕事をしている大人の人たちとお話しできることって、この仕事の面白さの一つだと思うんですけど、知らない世界のことが知れたり、ものの考え方みたいなことも、お客様から随分、勉強させていただいたと思っています。私に生きていく知恵をつけてくれたのも、常識を身に付けさせてくれたのもお客様たちだと思います。だから、みんな先生みたいな存在だったと思うし、お店は私にとっての学校みたいな場所だったんですよ。働いていたお店も良かったんですが、子供との時間を考えるともっと、融通の効く働き方に変えたいと思い、25歳の時にジョイフル札幌ビルに「シリアス」というスナックをオープンし独立しました。そして6年後に第23桂和ビルに移転、その後、クラブハイツ閉店に伴い接客に長けたお姉さんたちを引き入れるチャンスだと思い2号店を出しました。ニュークラで働いていた時代と比べると独立してからは景気は悪くなってきていましたが、スタッフにも恵まれ有り難いことに順調に今まできています。このお仕事の醍醐味は、何よりお客様の楽しそうな顔が見れることですね。コロナ前と今では団体さんも減りましたしススキノ以外の楽しみに目を向ける人が増えたのかなぁと思います。それは仕方ないことだと思うし、悪いことばかりでもないとは思いますが、ススキノの魅力も忘れないでほしいですね（笑）。ありがたいことにうちのお店は変わらず顔を見せていただける方が多く助かっています。だからこそ期待に応えられる居心地にいいお店であれるよう頑張りたいと思います。

今はボランティアにも力を入れています。母が若い時からの放射線治療の後遺症で障害があるのですが、その経験を生かして障害を抱えている方の相談に乗ったり、空港のトイレなどの施設を障害者に優しいものにするためにアドバイザー的なことをしていまして、そのサポートをしています。母とは子供の頃はあまり一緒に過ごせなかったのですが今はいい関係を築けていると思います。他にもボランティア団体の活動にも参加させていただいており、ボッチャ大会のお手伝いや余市に知的障害のある子たちとリンゴ狩りに行ったりもしました。ボランティアをやっていくうえでも、お店をやっていることで、お客様には相談に乗ってもらったり、力を貸してくれたりと助けられています。将来的にはホステスを辞めた方の老後に見守りなど、お世話になっているこの街に還元できるようなこともやれたらいいなと思っています。接客もボランティアも誰かを笑顔にできるっていう意味では同じように楽しんでやっていきたいと思っています。